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複数の相続人が全国各地に住んでいるのですが、どのように手続きを進めればよいのですか?

  • 文責:所長 弁護士 田中浩登
  • 最終更新日:2022年6月28日

1 相続人が全国各地にいても、手続きは変わらない

前提として、相続人が全員近くに住んでいても、全国各地に分散してしまっていたとしても、相続でやらなければならない手続きは変わりません。

遺言書がある場合には、その内容に従って遺言を執行することになります。

遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を進め、遺産分割協議書を作成し、具体的な遺産の分割手続きを行うことになります。

しかし、相続人が近くにいるかそうでないかによって、手続きにかかる時間と労力が大きく変わってきます。

2 まず、誰が相続人で、どこに住んでいるかを調べる

一番初めに必要になることは、相続人を確定させることです。

手掛かりとしては、被相続人のご家族の方などに連絡し、親族の状況(主に配偶者、子供、親、兄弟姉妹)を聞いていくのが第一歩になります。

もっとも、相続人の正確な情報を把握するには、戸籍を取り寄せて調べなければなりません。

これにより、相続人を確定させます(もし相続人に抜けや漏れがあると、遺産分割協議は初めからやり直すことになってしまいます)。

誰が相続人であるかがわかったら、次に、それぞれが住んでいる場所を調べる必要があります。

運よく全員の住居が分かっている場合は問題ありませんが、転勤の多い相続人がいる場合や、相続人が全国に散らばっている場合、正確に把握できないことの方が多いです。

この場合、戸籍の情報をもとに、市役所などに対し、住民票の取り寄せを行うなどしなければなりません。

住民票住所に住んでいない場合、専門業者による調査も必要になることがあります。

加えて、相続人が全国各地に分散しているような場合、相続人の数自体も多いということがよくあります。

たとえば、独身ですがご兄弟が多い高齢者が亡くなった場合、通常ご両親も亡くなっているため、ご兄弟が相続人となります。

しかし、そのご兄弟の中にも亡くなっている方がいると、その人の子供が代襲相続人になります。

その子供が複数人いると、相続人の数がかなり増えます。

そして、子供たちが進学や就職のために上京していたり、仕事の都合で転勤していたりする等の事情で、全国各地に散らばってしまっていることもあります。

相続人の数が多ければ多いほど、住んでいる場所の調査にかかる時間と労力は増えていきます。

3 相続人に、被相続人が死亡したことを伝える

全国各地に相続人が住んでいる場合、住所を調べるのは大変な苦労を伴うこともあります。

何とか相続人の連絡先が分かったら、今度は被相続人が死亡し、相続が開始したことを伝えます。

相続人に被相続人が死亡した旨を連絡したことを形として残すため、書面にして郵送するのが良いです。

後のトラブルを回避するため、厳密さを求めるのであれば、内容証明郵便も有効な手段です。

その理由は、相続人への連絡は遺産分割協議を進める第一歩という意味もありますが、相続人が相続開始(被相続人が死亡したこと)を知った日というのは、相続人が相続放棄や限定承認などの手続きを行える期間を確定する上で法律上重要な意味を持っているからです。

4 遺言執行・遺産分割協議を行う

⑴ 遺言がある場合

遺言執行者とされた者が、相続した人、遺贈を受けた人と連絡を取り合い、不動産の相続登記などの手続きを個別に進めていきます。

電話やメールなどだけでは困難な手続きがある場合、全国各地の相続人、受遺者を訪問して対応することになります。

当然ですが、全国各地に多くの相続人がいる場合には、とても大変です。

⑵ 遺言がない場合

相続人全員で、遺産分割協議を行う必要があります。

遺産分割協議は、相続人が一人でも欠けると無効になってしまうからです。

誰がどの遺産を受け取るかなど、遺産分割についてほとんど争いがなく、調整が少なくて済むケースであれば、電話やメール、手紙などによって、遺産分割協議を成立させられることもあります。

しかし、その場合であっても、遺産分割協議書には相続人全員が署名・押印をする必要があります。

相続人が複数いる場合、一堂に会して署名・押印をするのが一番確実ですが、スケジュール調整は簡単ではありません。

しかし、一つの遺産分割協議書を何度も郵送し、都度署名・押印をするのは、汚損や紛失の危険もあります。

そこで、遺産分割協議書に代わり、遺産分割協議証明書という手段もあります。

これは、全員の署名・押印が必要な遺産分割協議書と違い、相続人ごとに独立した書面なので、遺産分割協議の内容を書いた書面に各相続人がそれぞれ署名・押印し、郵送してもらうことで、遺産分割協議書を作成したのと同じ効果を得られます。

この場合であっても、遺産分割協議証明書の原文を作り、全国各地の相続人に郵送し、返送を受け取る作業が必要です。

遺産分割に争いがある場合や、分割の仕方を大きく調整しなければならない場合、あるいは相続人が高齢で郵送に応じることが難しい場合には、電話やメール、遺産分割協議証明書などで遺産分割を成立させるのは困難です。

相続人が一堂に会することができれば問題ありませんが、それぞれがお仕事等でスケジュールが合わなかったり、高齢であるために移動が困難であったり、移動に多大な交通費がかかってしまうなど、なかなか集まることは難しいのが現状です。

そうすると、やはり誰かが遺産分割協議の調整に入り、場合によっては全国各地の相続人を直接訪問するなどしたうえで、遺産分割協議書へ署名・押印を集めることが必要になってきます。

5 相続のことはお気軽にご相談ください

複数の相続人が全国各地に住んでいる場合、遺産分割協議を成立させるのは簡単なことではありません。

日々お仕事をされている方や高齢の方であれば、かなりの困難を伴います。

当法人では、相続に関するご相談を原則相談料無料で承ります。

土日祝日や夜間にもご相談いただけますので、池袋やその周辺にお住まいで、相続にお悩みの際は、お気軽にお問合せください。

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