遺留分侵害額請求のルール
1 遺留分侵害額請求について
遺言書によって、特定の人の手に多くの遺産が渡るようなケースでは、遺留分侵害が問題になります。
遺留分には様々なルールがあり、相手方から請求された金額を支払わなくても良いケースや、支払う金額を減額できるケースもあります。
以下で、遺留分侵害額請求のルールについてご説明します。
2 遺留分侵害額請求の5つのルール
⑴ 時効
遺留分侵害額請求権は、相続開始と遺留分の侵害を知ったときから1年間で時効になります。
遺留分を請求された場合、時効が成立していれば、遺留分を支払う必要はありません。
民法改正により、一定の生前贈与に対する遺留分は、原則として相続開始前10年間に限られることになりました。
そのため、生前贈与に対する遺留分請求に対しては、時効が請求できる余地が広がりました。
⑵ 遺産の評価
遺産に不動産や非上場株式が含まれているケースでは、その評価が問題となります。
不動産や非上場株式には様々な評価観点や評価方法があり、どういった観点・方法で評価するかによって、遺留分を算定する基準となる財産の額が変わることがあります。
遺留分を請求された場合は、不動産や非上場株式の評価額について交渉することで、遺留分を減額する方法を検討できるケースもあります。
また、建物が老朽化しているケースでは、建物取壊費用や残置物処理費用等を差し引くことができる場合があります。
⑶ 特別受益
遺留分請求者に特別受益がある場合には、特別受益の金額を差し引くことができることになります。
たとえば、遺留分の金額が3000万円である場合に、遺留分請求者が3000万円以上の不動産を生前に贈与されていた場合には、遺留分を支払う必要はありません。
特別受益は、不動産に限られません。
多額の現金、株式等の有価証券、宝石といった財産を生前贈与された場合であっても、特別受益に該当する可能性があります。
⑷ 対象外の財産
原則として、生命保険の死亡保険金は遺留分の対象外となります。
そのため、特定の相続人に多くの財産を残したい場合、遺留分対策として、生命保険を活用することがあります。
しかし、死亡保険金が遺産の大半を占める場合には、遺留分の対象となることもあるため、注意が必要です。
⑸ 寄与分
遺産分割の場面では、亡くなった方を介護していたなどの貢献について、一定の見返りを認める制度があります。
この制度を寄与分といいますが、遺留分の場面では寄与分は考慮されません。