不動産の相続手続について
1 不動産の相続で必要な手続
⑴ 不動産の名義変更
相続が発生したとしても、不動産の名義が被相続人から相続人へ自動的に変わるわけではありません。
不動産の名義変更の手続きを行わない限り、名義は亡くなった人のもののままです。
相続手続きをしていなかった結果、土地の名義が30年以上前に亡くなった曽祖父のままになっているというケースも珍しくありません。
不動産の名義変更をしないと、土地の売却、建物の取壊しや修繕などが事実上できなくなってしまいます。
また、2024年4月1日から相続登記が義務化され、一定の期限内に登記の手続きを行わなかった場合、過料を科せられてしまうおそれもあります。
そのため、不動産を相続した場合は、名義変更をする必要があります。
⑵ 相続税の申告
不動産を相続すると、相続税の課税対象となることがあります。
不動産の評価額と預金の金額などを足した遺産総額が、相続税の基礎控除額である3000万円+600万円×相続人の数を超える場合、死亡から10か月以内に相続税の申告をしなければなりません。
相続税の申告は、遺産の分け方が決まっていなくても必要になるため、注意が必要です。
⑶ 準確定申告
亡くなった方名義のアパートなどから家賃の収入がある場合、死亡後4か月以内に準確定申告を行い、所得税を納めなければいけません。
2 不動産の名義変更のやり方
不動産の名義変更は、必要な書類を揃えて、法務局で所有権移転登記申請の申立てをすることで行います。
相続登記の際に必要になる提出書類としては、以下のようなものがあります。
- ・戸籍謄本 ※1
- ・相続人全員の印鑑登録証明書
- ・遺言書、遺産分割協議書等 ※2
- ・登録免許税相当額の収入印紙
- ・申請する年度の固定資産評価証明書、固定資産納税通知書 ※3
- ※1 亡くなった方と相続人の関係(親と子、叔父と甥…等)により必要となる戸籍は異なります。除籍謄本、改正原戸籍などと呼ばれるものもあります。
- ※2 遺産分割協議書、相続分譲渡証書、相続放棄申述受理通知書、相続放棄申述受理証明書、遺産分割調停書、遺産分割審判書等、誰が不動産を相続するかわかる書類
- ※3 固定資産評価額にかかわる書類は、法務局に提出する必要はないため、厳密には必要書類ではありません。
ここでポイントになるのが、相続人が複数いる場合、そのうち一人だけの名義にするためには、遺言書や遺産分割協議書などが必要になることです。
遺言書があるか、相続人全員が同意をしているか、裁判所の調停や審判などで決着がついているか等の点が名義変更のハードルとなります。
ただし、法定相続分の割合で相続人全員の共有名義とすることはできます。
もっとも、申請書に貼り付ける収入印紙の金額を計算するために、不動産の固定資産評価額が必要になるため、申請に際しては区役所・市役所から取り寄せることになります。
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