相続放棄
相続放棄手続きの流れ
1 相続放棄とは
相続すると、不動産や預貯金などプラスの財産だけではなく、借金などマイナスの財産も、原則として相続分に応じて引き継ぐことになります。
しかし、血縁関係にあるからといって、常に借金を負うようなことになるのは、酷であろうと思います。
このようなとき、相続放棄の手続きをとれば、被相続人の財産を一切相続しないこととなります。
具体的には、借金などマイナスの財産が多いことが明らかである場合や、プラスの財産があったとしても他の相続人とのかかわり合いを避ける場合などに、相続放棄を検討することとなります。
2 相続財産の調査
被相続人と離れて暮らす場合や、疎遠である場合などは、被相続人の財産や生前の生活状況などがよくわからないことも、少なくありません。
そのため、相続放棄をするかどうか判断がつかないような場合には、一般的には、相続財産の調査を行い、財産の種類や金額などについて確認します。
これに対し、財産がどうであれ、トラブルを避けるために念のため相続放棄をするという場合には、特に相続財産の調査を行わないということもあります。
3 必要書類の収集
相続放棄を行うには、戸籍謄本等の必要書類を収集しなければなりません。
収集に時間がかかる場合がありますので、早めに着手するとよいです。
仮に相続放棄をしないとしても、相続手続きにおいても戸籍謄本は必要となるため、いずれにしても戸籍謄本等の収集をすることになります。
4 相続放棄手続きの期限
相続放棄手続きは、期限が決まっています。
自己のために相続の開始があったことを知ってから3か月以内に、被相続人の最後の住所地である家庭裁判所に対し、「相続放棄申述書」を提出しなければなりません。
その際に、戸籍謄本等の必要書類を添付します。
相続放棄をするか否かの判断が難しい、財産の調査が難しいような場合は、期間を伸長してもらえるよう、家庭裁判所に対し、早めに申立てを行っておくとよいでしょう。
5 相続放棄照会書と相続放棄回答書
裁判所に相続放棄の申立てを行うと、裁判所から相続放棄照会書と相続放棄回答書という書面が送られてきます。
照会書には、相続放棄を行う理由や、相続財産の処分を行っていないかなどの質問が記載されていますので、その回答を回答書に記載し、裁判所に返送します。
6 相続放棄受理
前記5の回答書の内容を踏まえ、相続放棄受理・不受理の審査が行われます。
裁判所に無事に相続放棄が受理されると、裁判所から、相続放棄申述受理通知書が届きます。
相続放棄のメリットとデメリット
1 相続放棄とは
相続放棄とは、相続開始後に相続権を放棄することをいいます。
相続放棄は、遺産の積極財産と消極財産のいずれも相続することを否定することになります。
例えば、遺産のうち積極財産よりも消極財産のほうが多く、遺産を承継することで損害を被るようなことが確実であるような場合には、相続放棄をすることが有用です。
2 相続放棄のメリット
相続放棄のメリットとしては、被相続人の負債を承継しなくても良いことにあります。
相続放棄を行うと、相続放棄をした人は初めから相続人ではなかったものとみなされます(民法第939条)。
そのため、被相続人に借金があったとしても、相続放棄をすれば借金を承継しなくても良いことになります。
また、被相続人が不動産を所有しており、その不動産の管理に費用が掛かってしまう場合も、相続放棄をすればその不動産を承継しなくて良いことになります。
ただし、相続放棄をした人は、相続財産管理人に引継ぎするまでは一定程度の保存義務を負担することになっています(民法第940条第1項)。
3 相続放棄のデメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産もともに相続することを否定するものであるので、相続放棄をしてしまうとプラスの財産を承継することができません。
また、相続税との関係では、相続放棄をした人は、生命保険金や死亡退職金についての非課税枠(500万円×法定相続人の人数)の適用を受けることができなくなります。
また、相続放棄をした人は、債務控除や数次相続控除も受けることができなくなりますので、注意が必要です。
このように、相続放棄にはメリットだけでなくデメリットもありますので、相続放棄を希望する場合には弁護士に相談することをおすすめします。